山岳ガイドに憧れて

前塩尻市議会議員 小野光明

2014年06月10日 05:42

 最近、山岳観光ガイドを目指す夫に連れ立って、松本市へIターンした20代女性に出会った。男性は福岡県、女性は石川県の出身という。女性は施設園芸の農家でアルバイト中だ。
 新たに国民の祝日「山の日」(8月11日)が設定されたことで、山岳観光への関心が集まる昨今。山岳県の信州・長野県に住んでいると当たり前すぎて、すぐそこにある雄大かつ風光明媚な山岳風景や緑の多い自然環境に、毎日のようには感動しないのかもしれない。
 確かに個人的にも、その地から離れて東京で生活した大学生時代、山の風景がないことが寂しくて山岳同好会に所属し、本格的に山登りを始めたことを思い出す。高校時代は部活動でバレーボールに熱中、標高3千m級の山々が連なる北アルプスは通学の車窓から眺めるだけの対象に過ぎなかったのに、である。
 だから、出身地でもなく一度でも山登りの素晴らしい感動を味わった人ほど、憧れの地への思いは募るかもしれない。若者の就職状況は近年、良好になりつつあるとはいえ、かつての経済高度成長期のような安定した生活基盤は得難い時代。就職しても長引く低成長により、将来の生活設計は見通せない。
 そんな時代だからこそ、自分のやりたいことを目指す気持ちも強くなるのだろう。内向きで他人との交流を避ける若年層が多いとされる中、チャレンジングな志を持つ若者に出会うと、こちらも誇らしく嬉しい気持ちになる。
 「主人がどうしてもって言うから。農業のことはよく分からないけど、仕事はとっても楽しいですよ」。女性の溢れる笑顔から、夫と伴に歩む新たな生活の充実ぶりが伝わって来た。
 

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